(No.11)火災への注意について – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.11)火災への注意について

2025年3月7日 掲載

事務局長 生安 衛

 3月に入りましたが、まだまだ寒さが感じられるところであります。

 今年に入って、日本列島に寒波が度々訪れ、災害級の大雪に見舞われた地域では交通が麻痺し、生活に支障が出る事態となりました。

 また、3月1日から春の全国火災予防運動が始まりました。火災の起きやすくなる季節になりますので、火の元には十分に気をつけたいと思います。

 岩手県大船渡市では、断続的に林野火災が発生し、2月26日に起きました火災では、3月5日からの雨もあり鎮火されましたが、市の面積の9%にあたる2,900ヘクタールが焼失しました。国内では平成以降の林野火災として最大の規模となりました。山火事は延焼スピードが早く、飛び火します。油断すると、逃げ遅れにつながりかねない危険性もあります。速やかに避難する必要があります。

 現在、日本赤十字社岩手県支部では、救援物資の配布のほか、盛岡赤十字病院の医師や看護師を派遣するなどの救護活動が行われています。

 日本赤十字社として、義援金の受け付けを3月6日に開始いたしました。お寄せいただいた義援金は、被災地の方々の生活を支援するため、全額を被災地の義援金配分委員会にお送りいたします。皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

<令和7年大船渡市赤崎町林野火災義援金>

 https://www.jrc.or.jp/contribute/help/20250306/

(3月は火災が多い)

 全国で火災が最も多く発生しているのは毎年3月です。

 昨年11月8日消防庁が発表した「令和5年(1月~12月)における火災の状況(確定値)」によりますと、3月は4,679件(12.1%)で最も多く、次いで、1月3,643件(9.4%)、2月3,625件(9.4%)、12月3,518件(9.1%)、4月3,496件(9.0%)となっています。圧倒的に3月での発生が多く、冬と春にかけての火災が多くなっています。

 これを発生原因別でみますと、たばこ3,498件(9.0%)、たき火3,473件(9.0%)、こんろ2,838件(7.3%)、放火2,495件(6.5%)、電気機器2,205件(5.7%)となっています。たばこ、こんろ、電気器具など、私たちの身の回りで使っているものも火種になっていることがわかります。

 特に、3月は、林野火災が増える時期だと思います。雑草などを焼く、野焼きやたき火が行われたり、ハイキングやキャンプなどで山に入る人が増えることから、火の不始末から火災が起きやすいことが影響しているのではないかと思います。

<消防統計(火災統計)>

 https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/

(林野火災は世界で頻発)

 今年に入り、世界では深刻な林野火災の被害が頻発しています。これは気候変動の影響だと指摘されています。

 1月7日に発生したロサンゼルスの山火事は、気候変動の影響で拡大し、多大な被害をもたらしました。3週間あまりで鎮火されましたが、1万棟を超える建物が被害を受け、多数の死傷者が出て、損失推定額は40兆円を超えるとも聞きます。

 国内でも、岩手県大船渡市以外にも、山梨県大月市や長野県上田市でも山林火災が起き、県内では三田市で山火事などの火災が急増しています。

 国外、国内で被害が多発する要因として、温暖化が指摘されています。温暖化による異常少雨や干ばつで、空気や地面が乾燥し、発火や延焼の危険性が高まっています。特に山林の落ち葉が積もって燃えやすい冬から春にリスクが高まると考えます。今回の大船渡市の火災発生日には乾燥注意報が出ていました。今年の冬は、太平洋側の空気が乾燥して、起こりやすい気象条件になったと思われます。

 また、高温で乾燥したフェーン現象の風が吹くことも一因として考えられます。風が強くなればなるほど、火災は一気に広がります。また、風向は突然変わることがありますので、消火するにも予測がたてにくいのでないかとも推測します。

 このように、気候変動によって、降水量が少なく、着火しやすくなる「乾燥」と、燃え広がりの原因となる「強風」という気象条件が、林野火災の被害を頻発・拡大しているのだと改めて感じています。

 さらに、林野火災によって森林を焼失させると、二酸化炭素が排出されて、さらに温暖化を助長する可能性もあります。

 気候変動による人道危機は、私たちの脅威となり、平穏な暮らしを脅かすものとなっていますので、世界全体でリスクに向き合わなければならないと思います。

(火災で注意すべきこと)

 火災は地震や台風等の災害と比べると大きく異なる特徴があると感じます。地震火災など自然現象に基づく火災もありますが、原因の大半は、人の故意または過失による何らかの行為によって誘発される災害だと考えます。

 また、火事は一度発生すると、鎮火に時間がかかり、被害が大きくなります。一度勢いを増した炎を食い止めることは難しく、消防署や消防団の初動の消火活動は重要でありますが、それ以上に、私たち自身が火の取り扱いには十分に注意したいです。

 とくに3月は、先ほど申し述べましたとおり、キャンプやピクニックなどで、山や森林にでかける人が増えます。キャンプでは、火を使うことが多いので、消したと思った火が完全に消えておらず、火災につながることが想定されます。「燃えやすい環境(木々)の中で、火を使っている」と自覚しながら、遊んだり活動することが大切です。

 気象庁では、空気の乾燥によって災害が起こる恐れがある場合に、「乾燥注意報」を発表します。そのため、乾燥注意報が出たときは、火災に注意しなければならないと強く意識する必要があります。

 また、日常生活においては、家電製品や日用品について誤った使い方をすると、火災の発生につながってしまうことがあります。例えば、こんろを使用する場合、火がついたまま離れないこと、ストールや袖が長い服でコンロを使って調理しないことなどに気をつけたいです。 

 今も寒さが残っていますので、ストーブを使われている方もおられると思いますが、ストーブから離れるときは必ず消すことや、近くに燃えやすいものを置かないことなどにも留意したいと思います。

 たばこを吸われる方は、寝たばこをしないことや火がついた状態でたばこを捨てないことをルールとして守ってほしいです。

 家電製品のチェックも重要です。プラグを長く差しっぱなしすると、ほこりが付着して、火災を起こすことがあります。また、プラグを抜くとき、コードを引っ張ると、コードの破損により出火する危険性もあります。

 そして、いつ起こるか分からない火災に備えて、火災警報器などの設備は万全な状態にしておく必要があります。出火をいち早く知らせてくれるため、初期消火や迅速な避難につなげられます。火災警報器等がどこに設置されているかの確認のほか、電池切れなどを起こさないよう、毎年点検することも大切です。

 これらのように、火災を起こさないために確認すべき点は多くあると思います。火災を起こさないため、身の回りのことで注意すべきことなどを家族で話し合ったり、点検するなどして、一人ひとりが火の取り扱いへの注意を徹底する意識をもちたいと思います。