(No.5)台風10号と防災・減災について – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.5)台風10号と防災・減災について

2024年9月5日 掲載

事務局長 生安 衛

 9月に入りましたが、猛暑の日が続いています。気象庁は、今年の夏(6~8月)は、1898年(明治31年)の統計開始以来、最も高かったと発表しました。日本の気温は地球温暖化で底上げされて、日本近海の海面水温の高い状態は解消されにくく、これまでにない高温が起きやすくなっていると言われています。まさに異常気象だと感じざるをえない状況です。

(台風10号)

 この異常気象の影響もあっての現象だと思われたのが、台風10号です。過去最強クラスであると言われ、きわめて遅い速度で、広い範囲で大雨が降り、被害をもたらしました。死者・行方不明者は8人にのぼり、130人近いけが人が出たほか、土砂崩れや浸水、河川の増水・氾濫が発生しました。

 今までの物差しでは計れない特徴をもち、従来とは異なる台風だと感じました。本支部でも常時、状況を把握していましたが、ノロノロと迷走し、予期せぬ方向に動いたり、予想がつきにくい状況にありました。

 また、地球温暖化の影響で近海の海水温が上昇し、勢力が衰える気配もなく、警報級の大雨の可能性もあったため、暴風雨の影響が長引き、土砂災害などにつながるリスクが出るのではないかと警戒していました。

 兵庫県では、8月29日夜には淡路島上空に、同じ場所に大雨が降り続ける線状降水帯の発生が確認され、県内で初めて「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されました。30日の兵庫県災害警戒本部会議では、台風の中心から離れたところで活発な雨雲ができて、猛烈な雨が降るのが今回の特徴との説明がありました。台風から離れていても、全国どこでも大雨や激しい突風が起こる可能性を示唆されたものであり、局地的なものではなく、広範囲での警戒が必要であると感じました。

 本支部としても、台風の動向を常時把握し、被害に応じた対応策などを検討しておりましたが、9月1日の正午の観測で、東海沖で熱帯低気圧に変わり、県内の被害は大きいものとはならず、出動までには至りませんでした。

 しかしながら、今回の台風10号に対する災害への対策として警戒が必要とされたため、9月1日の防災の日に、養父市で予定されていた「兵庫県・但馬地域合同防災訓練」が中止となりました。この訓練は、養父市を震源地とする直下型地震を想定し、県内の約80の機関が集結し、災害発生時の連携と自身の役割を認識する実践型訓練であったため、中止は誠に残念に感じています。

 このように、今回の台風の特徴は、偏西風の影響があったけれども、気候変動が台風の進路や勢いに影響を及ぼしたのではないでしょうか。台風シーズンは続きます。今後も、ほとんど動かなかったり、予期せぬ方向に動いたり、勢力が衰えない台風は増えるのではないかと心配しています。

 「いざという時には、普段やっていることしかできない」という危機対応の教訓があります。日頃から入念な備えを行っておくことが大切であると改めて実感しました。例えば、国土交通省・国土地理院のハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)で、自宅や周辺の浸水域や水深を予想するハザードマップを確認したり、家族で災害時にどう行動するのかを事前に話し合っておくことも重要です。

 また、気象庁のホームページには、台風や集中豪雨から身を守るために必要な知識、防災気象情報の効果的な利用、入手方法のほか、自分で行う災害への備えとして、①家の外の備え、➁家の中の備え、③避難場所の確認等、④非常持ち出し品の用意が掲載されていますので、改めて確認や点検をお願いします。

 URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/ame_chuui/ame_chuui_p1.html

(日本赤十字社の9月の防災・減災のプロジェクト)

 また、8月には、初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発令されました。幸い、注意は1週間で済みましたが、防災への意識が高まっています。

 9月の防災月間において、日本赤十社は、「ACTION!防災・減災―命のために今うごく―」プロジェクトを実施しています。未来に目を向けた「防災・減災への備え」を働きかけ、防災意識を高めるムーブメントを起こす取り組みです。

 今回のテーマは、「自然災害の備え」です。日本では各地で毎年のように災害が起こり、大きな被害をもたらしています。日赤が行った2020年(令和2年)の調査によると、災害に対し何らかの備えを行っている人の割合はおよそ5割でした。2人に1人は何の備えもないまま災害に遭う可能性があるのです。自分自身や家族、愛する人を守るための備えや行動の必要性が一層高まっています。

 今回、災害時に自助・共助によって救われる命を増やすことを目的に、一般の方々の防災意識を高めるための啓発を行うものとして、特設サイトとして、「SAVE365Magazeine」を立ち上げていますので、ご覧ください。

 また、9月ウェブCMの出稿として、Youtube(コネクテッドTV※1)で、動画「おうちの中のモンスター」を放映しています。

 SAVE365Magazeine:https://www.jrc.or.jp/lp/save365

 特設サイト「SAVE365Magazeine」では、「防災減災について知る」というメニューに配置された「目指せ防災チャンピオン 3択クイズ」をチャレンジしてください。3択クイズが8問出題されます。同じ問題を何度も解くことができるし、違う問題も挑戦できます。スマートフォン等でも気軽にアクセスできて、防災・減災の基礎知識が得られます。何度でも挑戦して、全問正解の防災チャンピオンを目指しましょう!

 その他、女性視点の防災コスメ&アイテム、家具安全対策ゲーム(通称:KAG)、ローリングストック※2の非常食レシピなどを掲載しています。

 このように、日本赤十字社では、防災・減災に必要な情報を発信しています。県民の皆様も日常生活を送るなかで災害に備えていただく。双方がリスクコミュニケーションを高めることで、災害時に、自助・共助・公助が機能するものと思っています。 

 引き続き、兵庫県支部では、来年1月に30年を迎える阪神淡路大震災で得られた経験と教訓を決して忘れることなく、災害への備えへの意識を高く持ち、物資の備蓄、防災教育・訓練などに力を注いでいきます。

※1 コネクテッドTV:インターネット回線に接続されたテレビ端末。

※2 ローリングストック:食料を定期的に食べ、食べた分を買い足して備蓄する方法。このことで、災害時にも普段から食べているモノを食    
             べることができます。