2025年4月7日 掲載
事務局長 生安 衛
4月に入りまして、兵庫県支部の近隣にあるなぎさ公園では、桜が静かに咲き始めました。春を感じる嬉しい季節となりました。春の訪れに胸を踊らせています。
今年は「万博イヤー」であります。いよいよ4月13日から10月13日までの184日間、大阪市此花区の人工島・夢洲において、158カ国・地域、7つの国際機関が参加する「大阪・関西万博(正式名称は2025年日本国際博覧会)」が開催されます。
現在、海外パビリオンの建設や入場券の販売などでの課題が新聞等で見受けられますが、会場建設や運営による経済的波及効果は2兆9,155億円と見込まれ、国内産業の活性化につながるとともに、何よりも世界の英知が結集された最先端の技術やサービス等に直接触れる体験により、将来に向けて夢と希望を与えてくれるものと大いに期待しています。
本来、万博は、1990年代から「人類共通の課題の解決策」を提示することを目指しています。今回は、気候変動・宇宙・再生医療・次世代エネルギー・先端技術などのグローバルで、未来の暮らしにつながる課題や解決方策などについて、未来へのロードマップを提示いただくとともに、将来に向けた夢や希望のレガシーを遺していただけることを願っています。
私自身、「公式ガイドブック」を購入し、万博が描く近未来を目にしました。これから様々なパビリオンを視聴し体験できることを楽しみにしています。
(赤十字パビリオンの出展)
このような世界中から人が集まる、大きな求心力を持つ「万博」に、赤十字としてのパビリオン「国際赤十字・赤新月運動館」を出展します。災害救助や人道支援等に携わってきた、日本赤十字社の職員の思いを映像等で紹介するパビリオンであります。
そもそも、日本赤十字社と万博の関係は深く、創設者である佐野常民が、1867年にパリ万博を訪れ、赤十字と出会ったことが日本赤十字社の始まりであると言われています。
そして、150年の時を経て、今もなお続く「人間を救うのは人間だ。~The Power of Humanity」の精神は、人道支援活動の中心にあり、「困っている人を救いたい」という思いは、普遍的な赤十字のスローガンとして現在の赤十字に受け継がれています。
これらを受けて、今回のパビリオンは、世界の人道危機、そこに立ち向かう人々のヒューマンストーリーを通じて、赤十字の使命と人間のチカラを約30分で体感する内容となっています。そして、赤十字と万博は、今も昔も「救いたい」という思いでつながっていると感じています。
また、天皇皇后両陛下におかれましては、4月11日と12日に、開会式での御臨席、会場への行幸啓の予定であり、12日には、「国際赤十字・赤新月運動館」をご視察いただく予定であることが発表されています。

(日赤発祥の原点は万博にあり)
さきほど申し述べましたが、日本赤十字社の誕生は、創設者である佐野常民が、1867年のパリ万国博覧会を訪れたことがきっかけとなっており、万博とのつながりは深いのです。
この万博には、1863年に発足したばかりの赤十字機関が負傷兵救護に関するパビリオンを初めて出展していました。具体的には、戦場での負傷者救護の方法、負傷者の医療器具や救急搬送用の馬車の展示、敵味方なく救うことを目的とした「ジュネーブ条約」の参加が訴えられていました。
佐野は、「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である」と、敵味方の区別なく救護する国際条約と活動の仕組みに衝撃を受けます。日本の近代化を目指す者として、革新的な人道の考え方に感銘を受けたものと推察します。
パリ万博で、誕生したばかりの国際赤十字は「守るべき命と尊厳」の価値を広く発信したことが評価されて、万博のグランプリを受賞しています。
その6年後、佐野は明治政府の代表として1873年のウィーン万博にも派遣され、多くの国による赤十字関連の展示を目にして影響を受けて、日本の赤十字社設立への思いを強くしていきました。
1877年、西南戦争の際、敵味方の区別なく戦場の負傷兵を救護するために、佐野は征討総督 有栖川宮熾仁親王に嘆願し、日本赤十字社の前身である博愛社の設立に奔走しました。
1882年の博愛社の社員総会で佐野は、「文明開化といえば、人はみな法律ができること、精密な機械ができることなどと言うが、私はそれだけだとは思わない。赤十字のような活動が盛んになることをもって、文明開化の証しとしたい」と主旨を述べました。
万博によって世界に触れ、開明的な信念を得た佐野が、「人道」を重んじる真の近代化への一歩を、日本赤十字社として歩み始めました。
このように、日赤の創設者である佐野常民が、パリ万博で赤十字と出会い、敵味方の区別なく人を救う理念に感銘を受けて、日赤が創設されて、さらには、万博を通じて赤十字が広がっていった150年近い軌跡を考えれば、世界の人々が赤十字と出会う機会となる万博での今回の出展は、大きな意義があるように思います。
さらには、大阪・関西万博が掲げる「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマは、赤十字の「人間のいのちと健康、尊厳を守る」という人道への思いとつながるものがあるようにも感じます。

(国際赤十字・赤新月運動館)
パビリオン・コンセプトは、「わたしの“できる”は、誰かのためになる」です。人道危機を自分事としてとらえてもらうことを目指しています。
今回のパビリオンは、3,000㎡(25m×12m)を3つのゾーンに分けて、各ゾーンを順次移動し、体験活動は30分となっています。
この赤十字パビリオンの目玉であるドームシアターでは、今、紛争や災害で苦しむ人々に寄り添う赤十字の活動をリアルに感じられるコンテンツとなっています。人間のいのちと尊厳を守る赤十字の理念に触れて、人道支援の大切さを実感できる時空間です。
ゾーン1(プロローグ)では、世界中の多様な人々の何気ない日常の風景を感じる空間を設け、平穏な日常の尊さを空間全体でまずは再認識してもらう空間であり、ゾーン2での体験につなげる序幕的な位置づけとなっています。
ゾーン2(メインシアター)では、半円型のドームシアター(半径4.25m)を設置し、映像と音声による没入感のある体験を用意しています。ここでは、東日本大震災、阪神・淡路大震災、人道危機に直面するパレスチナ自治区ガザなどで、災害や紛争によって日常を突如奪われる人道危機の厳しい現実を、現場経験した職員のリアルな証言を通じて、人道危機にまつわる出来事を自分ごととして見つめ直す場を設けております。
ゾーン3(エピローグ)では、壁一面に赤十字の幅広い人道支援活動を紹介しています。今、世界中で困難に立ち向かい、苦しみや痛みに寄り添う人々の存在を知るきっかけになると思います。また、幅8メートルの大型スクリーンに、パビリオンで感じた思いを投稿することができ、メッセージがスクリーンに投影される参加型の空間となります。
パビリオンの運営は、スタッフが全て日赤の職員と赤十字ボランティアであることが特徴です。毎日、兵庫県支部の職員もスタッフとして詰めております。
このような日赤ならではのオリジナルでハンドメイドな思いを込めた空間で、日赤スタッフの熱い想いに触れてもらいたいと思います。
現在、公式SNSやホームぺージでは、パビリオンの詳細や見どころ情報を発信しています。また、紛争地で苦しむ人々やそこでの赤十字の活動、国際人道法などについても提供していますので、是非お目通し願います。
日赤パビリオンを中心とした様々な情報発信によって、「赤十字は、動いている」を伝えるとともに、身の回りの小さなアクションが、誰かのためになることを伝えていきます。
皆様には、パビリオンのご来場などで、赤十字運動への理解・共感をさらに高めてもらい、人道への思いをもって、何ができるのかの思いを巡らし、新たな一歩を踏み出す機会にしていただければ幸いに思います。
<国際赤十字・赤新月運動館 – 大阪・関西万博>
X:@Expo_RedCross
Instagram:@expo2025_redcross
facebook:@expo2025redcross
