(No.8)海外たすけあいについて – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.8)海外たすけあいについて

2024年12月3日 掲載

事務局長 生安 衛

 街に響くクリスマスソングが今年も残りわずかだよと聞こえる時期になりました。光陰矢の如しと言われるように、今年もあわただしく過ぎようとしています。

 世界では、武力紛争や暴力行為、食料危機や自然災害など、今この瞬間にも多くの人々が様々な人道危機に直面しております。

 日本赤十字社とNHK等では、毎年12月に「NHK海外たすけあい」キャンペーンを継続的に行っており、今年は第42回のキャンペーンを実施させていただきます。

(NHK海外たすけあいキャンペーン)

 日本赤十字社では、1983(昭和58)年から、日本放送協会(NHK)と社会福祉法人NHK厚生文化事業団との共催で、「NHK海外たすけあい」キャンペーンを毎年12月1日から25日まで実施しています。

 そもそも1983(昭和58)年は、国際赤十字創設120周年、NHKテレビ放送開始30周年という記念の年であり、その年から始まり、40年間を超える長きにわたって続いていることに驚きを感じざるを得ません。

 このキャンペーンは、赤十字の国際支援の意義や活動内容を多くの方々に知っていただく機会となり、ひいては、皆様方に活動への共感を高め、寄付という具体的な協力行動につなげていただいていることに感謝申し上げます。

 特に、日本赤十字社の使命である、お一人おひとりがもつ「苦しんでいる人を救いたい」という気持ちを結集させて、人道第一に公平かつ中立的に支援を届けることにつなげていくことを体現化する一つのセレモニー的な役割を担っているものと感じています。

 さらには、赤十字活動そのものへの共感や信頼を得ることにもつなげることができればと期待しております。

 このキャンペーンによる寄付額は、令和5年度約8.5億円、累計額は約296億円にのぼります。日本赤十字社の重要な事業の一つである「国際活動」の財源とされており、170の国と地域で支援を必要とする人々に対して、緊急救援、復興支援、開発協力などを行う費用として、活用させていただいているところであります。

(第42回キャンペーンの概要)

 第42回となる今回は、世界が第2次世界大戦以来、最も多くの残虐な武力紛争に直面しており、人類の4分の1に当たる20億人が紛争の影響を受ける場所に住んでいる現状を鑑みて、人々のいのちと尊厳を守るために、今必要な支援や活動を届けることを目的としています。

 現在の世界情勢をみると、攻撃の対象としてはならない民間人にも大きな被害が及んでいる憂慮すべき事態にあると感じます。そのためにも、武力紛争下の支援を可能にするための国際人道法についても、県民の皆様の理解を得るきっかけにしたいと考えています。

 『たすけあうことが希望への道をひらく』をスローガンにして、12月1日(日)から25日(水)までの期間、行うこととしております。

 窓口は、兵庫県支部、赤十字病院、献血ルームのほか、NHK神戸放送局1階においても、期間中の平日10時から18時に窓口を開設し、寄付の受付を行っています。

 ご寄付の方法等は特設サイトをご覧ください。例えば、2,000円の寄付であれば、安全な水2ℓ×40本、5,000円であれば給食30人分、10,000円であれば小児用医薬品500人分の支援となります。

 また、街頭募金も実施いたします。12月8日(日)にJR姫路駅piole姫路北側、15日(日)にJR三ノ宮駅・交通センタービル周辺において、午後1時~3時の間、支部職員が各赤十字奉仕団・姫路赤十字看護専門学校生・中高校生の皆様とともに、リーフレットや風船などを配布しまして、募金の呼びかけを行います。

(特設サイト)https://www.jrc.or.jp/contribute/help/tasukeai/

(最近の国際支援活動)

 県民の皆様とお話をすると、国際支援活動について尋ねられることがあります。この場をお借りして、最近の主な支援状況について、取り上げたいと思います。

 世界では、相次ぐ武力紛争や暴力行為、激甚化する自然災害、深刻な食糧危機など、様々な人道危機が複合して起こり、多くの人々が命をつなぐための支援を必要としています。

 とりわけ、難民・避難民は過去最多の1億2,000万人との報告もあり、その多さに驚愕するとともに、心が痛みます。

 日本赤十字社の支援の一つとして、紛争に伴う難民・避難民などへの対応があげられます。2022(令和4)年2月から続くウクライナ人道危機、昨年10月から事態が深刻化したイスラエル・ガザ人道危機、2017(平成29)年に暴力から逃れたバングラディッシュ南部避難民など、現在も紛争や暴力の影響を受ける人々が辛い気持ちを抱えながら生活をされています。また、住み慣れた国や故郷などから余儀なく避難された人々もおられます。

 このため、医療支援、救援物資・医薬品の配布、給水支援などの救援活動に取り組んでいます。また、紛争の混乱によって離散した家族の再会支援や収容所の定期訪問などの保護活動も実施しています。

 例をあげると、ウクライナとロシアによる国際武力紛争が終息することなく、多くの建物、インフラが破壊され、死者や負傷者が増え続けています。首都キーウに日本赤十字社の現地代表部を置き、巡回診療支援・訪問リハビリテーション支援・リハビリテーションセンター支援など保健医療サービスを中心とした支援事業を実施しています。

 また、先月、兵庫県支部として、神戸赤十字病院の看護師をバングラディッシュに派遣し、バングラディッシュ赤新月社の地域保健活動の成果を測るための地域保健調査に係る業務に従事していただきました。

 今月には、三木市にある兵庫県広域防災センターに世界の日赤国際要員100名程度が集まって、10日間、緊急事態や大規模災害発生時に備えるための訓練も行うことが予定されています。

 二つには、頻発、激甚化する災害への対応があります。世界各地において、気候変動の影響とみられる災害が頻発化し、食料危機や保健衛生状況などに影響を与えています。

 これらを支えるため、食料支援、現金・物資給付、医療サービスの提供、給水・衛生促進などのほか、農家への種苗や農具、技術支援などを実施しています。

 例えば、今年4月3日に発生した台湾東部沖地震から8カ月が経過しました。地震の後も、非常に勢力の強い台風が 7 月と10 月に上陸し、暴風雨や洪水によって多数の死傷者が発生しました。台湾赤十字組織は、台風の上陸前から各地で救援物資の配付準備や救護班の出動準備を進め、避難所に避難する被災者の方々へ寝袋を届けるなど迅速に対応しています。日本赤十字社は、台湾赤十字組織による中長期的な復興支援を支えるため、資金援助を行っており、さらなる協議を重ね、より良い復興支援を進めていきます。

 三つには、人々のレジリエンスを高めるための取組です。赤十字では、防災教育や救急法の普及などを通じて、普段から人々が予測できない災害に備えて、自ら対応し、立ち上がる力となる「レジリエンス」を高め、生きる力を後押しする取組を推進しています。

 11月号でも少し触れましたが、「自らのいのちと健康は自分で守る」という自助、「人々の尊厳が守られるように助け合う」という互助の意識をもつことが何よりも大切であると思っています。

 赤十字では、海外の現地のボランティアの皆様とともに、地域の生活習慣や文化を理解し、病気や怪我に対する予防のための啓発も展開しています。

 例として、モンゴルでは、気候変動の影響で夏の干ばつとそれに続く厳しい冬が繰り返されており、「ゾド」と呼ばれる大寒波に伴う複合災害が頻繁に発生しています。日本赤十字社ではゾド対応のための資金援助や衛生用品セットの寄贈のほか、こころのケアの緊急対応コーディネーターを派遣して、災害に苦しむ人々の心に寄り添った活動を進めています。

 この歴史あるキャンペーンは、世界で苦しんでいる人々を救うための取組でありますので、兵庫県支部・施設の職員はもとより、赤十字奉仕団などのボランティアや青少年赤十字メンバーなどの積極的な参加を得ながら、進めております。
 あわせまして、皆様お一人おひとりのご理解とご協力をお願い申し上げます。