(No.4)青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センターについて – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.4)青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センターについて

2024年8月14日 掲載

事務局長 生安 衛

 8月に入り、夏休み真っただ中です。猛暑の日が続いており、外に出ただけで汗びっしょりになります。暦の上では8月7日が立秋で、この日から秋に入ると言われていますが、その気配も感じられません。

 7月26日から第33回夏季パリ・オリンピックが開催されて、様々な国・地域のアスリートによる熱戦に手に汗にぎる毎日でした。8月11日に閉幕し、日本選手団は最多の金メダル20個、銀・銅あわせて45個を獲得する活躍をみせました。28日からのパラリンピックも楽しみです。また、100周年を迎える阪神甲子園球場で全国高校野球選手権大会が8月7日から始まり、白熱した試合が繰り広げられています。

 青少年の皆様には、熱中症予防などに心がけたうえで、夏休みだからこそできる様々なことに積極的にチャレンジしてほしいと思います。

 兵庫県支部にとっても、夏休みは、青少年赤十字メンバーの皆様に、日本赤十字社の活動を知り、体験していただく重要な時期であり、様々な事業を実施しています。

 その代表的な事業である「兵庫県青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センター」については、8月7日~8日、兵庫県広域防災センターで、県内の中学校・高等学校9校46名の生徒、指導者10名の皆様に参加いただきました。また、運営スタッフとして、支部指導講師1名、赤十字奉仕団12名の皆様にもご参加いただき、実施しました。

(青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センターとは)

 兵庫県青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センターは、青少年赤十字の最も特徴のある教育プログラムの一つで、集団生活を伴う学習活動の場として実施しています。

 我々、日赤の職員は、略して、トレセンと言っています。私は初めて聞いた時、センターというので、「施設(拠点)」のように勘違いしましたが、あくまで、生徒たちの集団学習のための事業のことです。

 このトレセンで、青少年赤十字メンバーは、リーダーとして必要な自主・自律の精神を身につけ、赤十字や青少年赤十字に関する知識や技術への理解を深め、生活態度全般にわたっての学びを深めていきます。

 生徒の皆様は、二日間、学校も学年も違うメンバーと一緒になって、様々なテーマに対して主体的に意見を出し合って、一緒に取り組みます。宿泊行事になりますので、メンバーと寝食を共にするとともに、学校では体験できない様々な研修や実習を通じて、楽しく学ぶ場になるものと考えます。

(トレセンの特徴)

 トレセンのプログラムは過去から引き継がれてきたものであり、次のような特徴があります。

 一つには、学校も学年も違う8~10人程度のメンバーがホームルームの中で、自分の考えや反省、疑問などを自由に話し合い、必要に応じて指導者が助言します。このホームルームが生活の基本単位であって、お互いに話し合い、行動しました。

 二つには、子どもたちの自主性を引き出すために、各自の自発性に基づく「ボランタリー・サービス(V・S)」を活動や組織運営に取り入れていることです。役割をあらかじめ定めた係活動は廃止して、自発的に自分たちで決めていきます。

 今回も1日目の夕食、2日目の朝食・昼食にしても配膳・座席位置・開始の合図、後片付けの方法のほか、1日目の夕べのつどい、2日目の朝のつどいについて、どうすれば全員と楽しく交流できるかなどを考えていくのです。

 三つには、子どもたちが自己の行動管理、危険予知など、先を見越した行動を主体的にとれるようになるため、その意識付けを重視していることです。災害など、将来起こるかもしれない万が一の事態のために、日ごろから備えて行動することを意識付けてもらいます。

 四つには、先生の号令ではなく、行動の基礎になるすべての情報は「掲示板」に掲示します。このことで、指示されて動くのではなく、児童・生徒自身の自己管理を促す生活を送ってもらいます。

 五つには、指導者には本人の気づきを待つ姿勢が求められます。生徒自身が問題、ニーズを気づき、納得するような側面支援を重視しています。

 この方式に、初めは手探りで難しい部分もあるように見受けられましたが、「気づき・考え・実行する」の青少年赤十字の態度目標を養い、教室では学べない、たくさんのことを学べ、得られるものも大きいのではないかと考えています。

(今回のプログラム)

 1日目は、ホームルームごとに自己紹介を行った後、トレセン、ホームルーム、ボランタリーサービスについての考え方に関する説明があり、各ホームルームで意見交換を行いました。次に、来年1月17日に阪神・淡路大震災から30 年の節目を迎えるにあたって、当時の動画を視聴して、発災直後の避難所などの様子や日本赤十字社の救護活動、赤十字ボランティアの活動を学びました。

 その後、ホームルームごとに「避難所で使えるダンボールトイレの制作」「保存食アルファ米を使った炊き出し・アメリカンドックの調理」に挑戦し、夕食後は、夕べのつどいで参加者同士の交流を行いました。最後は、AEDを用いた心肺蘇生、きずの手当を学び、ホームルームで今日一日の振り返りを行いました。

 2日目は、朝のつどいでの青少年赤十字旗の掲揚、体操に始まり、ボランタリーサービスの振り返りの研修のあと、兵庫県青少年赤十字救急法競技大会を実施し、「胸骨圧迫部門」と「本結び部門」で手技の速さと正確性を競い、上位となったホームルームには表彰状などを贈呈しました。昼食後は、トレセンの総仕上げとしてフィールドワークを行い、二日間のトレセンで得られた知識と技術を再確認し、終了しました。

(トレセンの意味合い)

 私たちは、社会では一人では生きていけません。何らかの集団に属して、各人が分担し、助け合い、支えあって生きていかなければなりません。そういった意味からも、トレセンは、若い青少年の時期から、集団の中で、進んで役割をもち、活動し、時と場所によっては、リーダーになり、その協力者になる集団生活の学習の場になると思います。

 参加されたメンバーからは、「生徒会の役員を目指しているので、リーダーとしての学びができたように思う」「色々挑戦できて楽しかった」「一泊二日は、あっという間に終わってしまった」などの感想がありました。

 今回、新たに出会われた仲間たちと交流し、得られた経験を持ち帰って、学校で、赤十字活動を広めていただくことを大いに期待しております。