(No.2)被災者に寄り添う救護体制づくりについて – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.2)被災者に寄り添う救護体制づくりについて

2024年6月7日 掲載

事務局長 生安 衛

 6月3日(月)午前6時31分頃、石川県輪島市と珠洲市で最大震度5強の地震がありました。1月1日以降、M3.5以上の余震が600回以上発生していると聞いています。兵庫県支部では、石川県支部や本社からの情報等で状況を把握し、連携して対応できる準備体制を進めています。

(災害救護は赤十字活動の重要な任務)

 日本赤十字社は、日本赤十字社法、災害救助法、災害対策基本法などによって、災害発生直後から復興期までの救護活動やこころのケア活動を行う組織と位置づけられています。

 災害救護は、私たち赤十字活動の重要な任務の一つであります。

 そのためには、自然災害や大事故が発生し救護活動が必要になった場合に備えて、日常的な体制が不可欠であります。特に体制づくりのためには、救護活動に熱意をもって従事する職員を確保し、さらには、一人一人の知識や技能の習得、経験などでの能力向上を図っていくことが重要であり、これらを相乗させて、救護活動の実行力の幅をより広げるよう努めていきたいと考えております。

(救護活動に熱意をもって従事する職員)

 5月13日(月)・17日(金)・21日(火)、神戸赤十字病院・兵庫県赤十字血液センター、多可赤十字病院、姫路赤十字病院で勤務されている職員(医師・看護師・事務職員・薬剤師等)の皆様に対して、災害救護業務を担っていただく救護員としての辞令を15班308名に交付させていただきました。このことで、被災者の命と健康、尊厳を守るという赤十字の使命を実行できる体制が構築できたと考えています。

 現地で、被災者に寄り添う救護活動を行う「救護班」、活動の調整を行う「災害医療コーディネートチーム」、被災者へのこころのケアを実践するための「こころのケア班」を編成できる体制です。

 救護班の構成は、原則として6名体制です。1名が医師、3名が看護師、2名が主事(事務職員・薬剤師・診療放射線技師等)となります。

 さらに、後方支援活動として、現地で活動を行う救護員等の日常的な職務をカバーし、本来業務が円滑になされるような体制を組んでいただくことも大切であります。

 なお、今回の能登半島地震では、救護班11班、コーディネーターチーム4班、こころのケア班1班を派遣いたしました。

(知識や技能等の習得のための研修等)

 災害時の救護活動を迅速に行うには、赤十字救護員として必要な知識や技術を習得することも極めて重要です。そのため、5月29日(水)には救護員技術研修を実施しました。今回の内容は、令和6年2月1日から労働安全衛生規則の改正で義務化されました「テールゲートリフター特別研修」と通信機器の操作確認です。テールゲートリフターはトラック荷台の後部に取り付けられた荷物積み降ろし用の昇降装置で、荷役作業の効率化に資する一方、墜落、転倒、下敷き、はさまれといった事故が発生する可能性があります。

 災害時には、資機材をトラックに搭載し、救護活動を行います。救護員として、自身の安全を確保し、けがをしないためにもテールゲートリフトの取り扱いは重要であります。この研修で誤った知識や操作、安全確認不徹底などが起こることがないよう徹底いたしました。

 6月1日(土)には、「救護員基礎・実践研修」として、主として初めて救護員等として活動される方を対象に災害救護活動に必要な知識や実践を学ぶ研修を行いました。受講者57名が8班に分かれて、救護員指導者や救護員指導担当者、日赤DMATなどの30名のスタッフの皆様による丁寧な指導や説明を受けました。

 内容は、災害医療の体系的アプローチ(CSCATTT※1)、こころのケア、トリアージ※2の具体的な方法と実習、避難所等での情報収集・被災者情報の管理の実習、避難所のアセスメントなど、災害救護業務で必要な内容であり、研修は長時間に及びました。

 さらに、6月15日には、近畿府県支部合同での「第4ブロック合同救護訓練(和歌山県)」に参加する予定です。

 このように様々な研修や訓練を実施し、救護員等の皆様に参加いただき、救護員としての能力や技術がさらに向上されるよう、研鑽に励んでいく予定です。

 今後も、兵庫県支部では、赤十字の使命を果たすべく、被災者に寄り添う救護活動が迅速に実施できる体制づくりを進めてまいりたいと考えております。

※1 C:Command&Control(指揮と連携)、S:Safety(安全)、C:Communication(情報伝達)、A:Assessment(評価)、T:Triage

(トリアージ)、T:Treatment(治療)、T:Transport(搬送)

※2 治療と搬送につなげるべく、医療資源の分配順位をつけた群(治療の順位)に傷病者を迅速に分類すること